考えつくままの

美しい嘘をつき続けたい

パジャマと法事と謎儀式

 早朝6時。祖母からの電話に叩き起こされ何事かと出てみると「もうあんたの家の下に来てるよ」とのこと。私は前日の夜に祖母から「明日は法事だから朝早くに迎えに行くよ。荷造りしてなさいよ」と言われていたことを思い出した。なんと私はその時点で荷造りも何もしていなかった。本当に愚か。私は焦って適当に荷物を詰め、パジャマのまま外へ飛び出し、祖母の車に乗り込んだ。

 

 車は早朝の静かな道路を走っていく。私の故郷は栄えている都市から遠く離れた場所にある。車で二時間くらいかかる。私は早々に意識を手放し、目が覚めるとそこはもう墓であった。一族郎党が喪服で墓に集まっている中に私は寝汗びっしょりのパジャマ姿で放り出されてしまった。誰かつっこんでくれたっていいのに、誰もパジャマに触れてくれないので私はなんとも言えない恥ずかしさを覚えた。親戚の一人一人に「このような格好をしているのは急いで家から出てきたからなんです」と説明してまわりたかった。

 

 今回の法事は曽祖父と曽祖母の法事である。二人とも亡くなったのはここ数年の話なのだが、行事の担い手がいないので、三十三年忌まで一気に終わらせるのだそうだ。私は法事の段取りというのは全くわからないので、墓の隅っこでぼんやりことの成り行きを見守っていた。そうすると、おじさんたちが墓を開けて、中から曽祖父と曽祖母の骨壷を取り出し、骨をブルーシートの上に出し始めた。そうして、上から塩のようなものを骨にかけ始めた。急な展開に隣のおばさんに今は何をしているのか、と聞くと「洗骨」と言われた。洗骨というのは沖縄の伝統的な葬法で、亡くなった人をそのままの姿で一度埋葬し、何年かした後にまた取り出して、骨にくっついているなんやらを洗い清め、骨壷に入れる、というものである。しかし、私の曽祖父と曽祖母は火葬にしてあるので、火葬にしても洗骨があるのか、と驚いた。おじさんは「洗骨の名残」と言っていたが、そんな話は聞いたことがないのでもしかしたらうちの一族オリジナルかもしれない。次の民俗学の授業で先生に聞いてみようと思う。